中国越境ECとは?主要なモール・市場規模・参入方法を解説

中国越境ECとはなにか、どのように参入すれば良いか気になっていませんか。中国越境ECとは、日本国内から中国へ向けて商品販売を行うECのことです。中国のEC市場は2020年に240兆円を突破し、第二位のアメリカの3倍の規模を誇る世界最大の市場となっています。日本企業も中国市場へ参入しておりますが、言語や商習慣の壁から踏み出せない企業も多くあります。本記事では、中国越境ECの概要や具体的な参入方法を解説します。中国のEC市場は5年で3倍という成長を果たしていますが、中国内のネット普及率は6割にとどまっています。国内のネット普及が拡大すれば、今後さらに市場は成長することでしょう。記事内では、中国越境ECに参入する際のポイントや注意点もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

目次

中国越境ECが注目されている理由

中国越境ECの市場規模

越境ECを利用するユーザー

越境ECで売れている商品

中国で展開する越境EC主要モール

今後の成長が見込まれるECモール

中国越境ECへの参入方法

参入する際に検討すべき項目

中国の越境ECでのマーケティング

中国で商品販売する際の注意点

まとめ

 

中国越境ECが注目されている理由

中国越境ECが注目されている理由は、中国人の購入経路の変化です。現地での購入からECでの購入に移行している状況が伺えます。かつて、中国人観光客が日本で大量に商品を購入していく様子を「爆買い」と表現してニュースなどでも取り上げられていましたが、現在ではすっかり見なくなりましたよね。コロナ禍で訪日できなくなったとも考えられますが、それなら在日中国人に依頼すれば爆買いは継続しているはずです。中国は2019年にEC市場の健全化のため電商法を導入しました。EMS(国際スピード郵便)の開封検査が厳しくなるなど、通関規制が一層強化されることになります。中国での法規制が進み、個人の代行業者が事業を継続できなくなってしまったのです。それでも日本製品のファンは多く、購入先として選ばれたのが越境ECです。購入経路が越境ECに移り正規メーカーから直接商品を取得するようになったことと、世界的なEC市場の成長が追い風となり、今中国越境ECが注目されているのです。

中国越境ECの市場規模

中国ECは200兆円を超える規模を誇りますが、中国越境ECにおいても依然として大きな規模の市場があります。2020年の中国越境ECの総輸出入額は27兆円。その内9.1兆円は海外からの輸入が占めています。(参照元:三菱UFJ銀行「 広東省における越境EC発展推進政策 」)また、越境ECでの日本からの購入額は1兆9499億円で前年比17%増となっており、今後ますますの成長が期待されています。(参照元:経済産業省「 電子商取引に関する市場調査 」)世界で見ても今後のEC市場の成長は確実視されています。2021年時点で世界のEC市場は80兆円ほどの規模がありますが、2026年には500兆円となり、5年で6倍以上との成長予測が経済産業省より公表されています。理由としては、越境ECの普及、自国で手に入らない商品への需要、自国よりも安価で手に入る購入先、メーカーからの直接購入による商品の信頼性の向上などが挙げられます。世界の市場拡大を引っ張る存在として、中国市場はさらに早いスピードで成長していくことでしょう。

越境ECを利用するユーザー

中国での越境ECユーザー数は1億3000万人となっており、すでに日本の総人口を超える中国人が越境ECを利用しています。越境ECユーザーの男女比は5:5となっていますが、ユーザーの半数は19歳~30歳までの20代が占めており、若いユーザーの消費が中心となっています。とくに近年増加傾向にあるのが月収85,000円前後の中所得者層です。彼らの多くは中国一級、二級都市に居住しており、月平均のEC利用額は5,000 10,000円ほどとなっています。北京、深セン、上海、広州の4都市を一級都市、成都、重慶、西安、杭州などを含む15都市を新一級都市、その他各省の都市となるような30都市が二級都市です上記のような中国各地の都心部に住む若者の商品を選ぶ基準としては、品質や安全性を重要視する傾向にあります。同年代のインフルエンサーや流行の影響を強く受けており、こだわりをもって商品選びをしている状況が伺えます。中国の調査会社iiMedia Researchのレポートによると、越境ECの商品に求められることの上位は「ブランド、品質、価格、原産地、クチコミ」となっています。厳しい目線での商品選びがなされている反面、正規品であることの安心感が越境ECには求められているようです。

越境ECで売れている商品

中国ECでの売れ筋商品を見てみましょう。JETROの調査によると、カテゴリによっては前年比2,000倍以上も伸びている商品もあり、今後もそのような急成長を遂げる商品が出てくるかもしれません。

l美容関連・・・フェイスパックを中心に、美白・抗酸化機能を持つ肌ケア商品が前年比52倍以上の成長。シェーディング3倍、ハイライト3倍、メンズ化粧2.5倍の実績を残しています。 l医療機器、健康食品・・・カラーコンタクトレンズは前年比21倍の成長。その他コロナ関連商品である体温計は6.7倍、メラトニンサプリ89%増、葉酸64%増など免疫を高める商品が売れ筋となっています。l マタニティ、ベビー用品・・・妊婦の便秘予防サプリメントは前年比2,600倍の成長。その他、出産後ボディシェープ機器の販売が前年比7.2倍など、急成長しているジャンルです。lデジタル家電・・・電子美容機器が前年比2倍の成長となっています。 l衣料・・・女性人気のスリッポンタイプのスニーカーの売上が前年比2.8倍に成長しています。lパーソナルケア・・・ヘアカラー商品が前年比80%増の売上となりました。 l食品・・・オーガニック・プロテインなど植物性の食品が前年比2,100倍の売上になっています。また、中国ECといえばイベントでの売上規模の大きさが度々日本のニュースなどで取り上げられたりしていますが、アリババグループのイベントW11(独身の日:11月11日)において、越境ECでの国別ランキングでは日本が5年連続トップを獲得しています。越境ECでの売れ筋商品も確認しておきましょう。

lメイクアップ・美容関連(構成比35.8%)l 健康食品・サプリメント(31.2%)lシャンプー、ボディソープ(24.4%)l 食品・飲料(20.5%)lデジタル家電(16.7%)l アパレル(14.4%)中国EC全体と同様、美容・健康関連商品が売上の上位を占めているのが分かります。日本の商品では美顔器やスキンケア化粧品など大手の商品が売れ筋となっています。(引用元:JETRO「 中国EC市場と活用方法 」)

中国で展開する越境EC主要モール

中国で展開している越境ECの主要モールをご紹介します。

lTmall Global(天猫国際)・・・中国越境ECにてシェアNo.1(26.7%)を誇るモールです。EC本体であるTmallはアリババグループが運営しており中国No.1ECサイトとなっています。年間アクティブユーザーは7億5,000万人となっており、中国のネットユーザーは10億人なので、ネットユーザーのほとんどがTmallを利用している計算になります。Tmallの利用ユーザーは商品の品質にこだわりを持つ中間層など20代の若者が中心です。 lKaola(考拉海購)・・・中国越境ECにてシェアNo.2(22.4%)のモールです。2019年にアリババグループに2200億円で買収されたので、中国の越境EC市場の半分はアリババグループが占有していることになります。企業が出店する直営店舗が半数近くを占めている点に強みがあり、正規店からの購入がモールの信頼性につながっています。ユーザーの8割が女性で30代くらいまでの購買力のある中間層が多いモールです。 lJD Worldwide(京東国際)・・・中国越境ECにてシェアNo.3(11.3%)のモールです。本体のJD.comの年間アクティブユーザーは2021年に5億人を突破し、業界大手でありつつも依然として高い成長を見せるモールでもあります。1998年設立とECの中では歴史があり、PC周辺機器の販売で創業したこともあり、デジタル家電やPC関連製品の販売に強みがあります。 lSuning(蘇寧国際)・・・中国越境ECにてシェアNo.4(11.2%)のモールです。かつて中国国内に1600店舗を構えていた中国最大の家電量販店が運営するモールでもあります。日本では同じく家電量販店のラオックスを買収したことで名を知られるようになりました。l Vip(唯品国際)・・・中国越境ECにてシェアNo.5(10.5%)のモールです。海外のブランドとの直接契約で商品を仕入れており、ファンション・香水・バッグ・化粧品など女性好みの商品の取り揃えと信頼性に定評のあるモールでもあります。今後の成長が見込まれるECモール

2022年時点での市場シェアはないものの、今後の成長が見込まれている振興ECモールをご紹介します。

 lDouyin(抖音小店)・・・抖音は中国版TikTokで月間ユーザーが6億人で、広告収入で中国No.1を獲得している巨大サービスです。その抖音が2019年にリリースしたECモールがDouyin(抖音小店)になります。投稿される動画やLIVEから商品を購入できる仕様になっており、LIVE販売が当たり前になっている中国の潮流に乗れるサービスとして期待されています。また、興味ECと呼ばれる独自システムも開発しており、目的を持った購入ではなく、偶然見た動画をきっかけに衝動買いをしてしまうような仕組みを構築している点が特徴としてあります。このような購入行動はパルス型消費行動と呼ばれており、新たなマーケティング手法として注目されています。 lACD MALL(全日空海淘)・・・社名にもある通り、全日空が参画している中国越境ECモールです。日本のサーバーで注文を受け、日本から商品を直送で発送する流れになっており、日本国内でビジネスが完結する日本初のサービスになります。全日空という日本屈指の物流企業が参画しているため、信頼性でいうと他社を圧倒するブランド力がありますよね。 中国越境ECへの参入方法

具体的な中国越境ECへの参入方法を解説します。

越境ECに出店

1つ目は、TmallやKaolaなどの大手越境ECに出店する方法です。最も一般的な方法であり、ネットユーザーのほとんどが利用しているプラットフォームですから、商品を認知してもらえれば勝機を見出すことが可能でしょう。日本法人のままで出店ができるので、中国法人を設立せずに本格的に中国EC市場へ参入できます。

越境の自社ECサイト

2つ目は、越境の自社ECサイトを構築する方法です。独自ドメインで自社のECサイトを立ち上げ中国市場に参入します。Tmallへの出店審査が厳しく新規の店舗が参入するにはハードルが高くなっている現状があります。香港などにサーバーを設置して独自ECでの参入を進める企業も多く出てきています。

越境EC業者に委託

3つ目は、越境EC業者に委託販売する方法です。TmallやKaolaにすでに出店しているお店に越境EC業務を委託して商品販売をおこないます。すでに審査を通ったお店でモール販売するので、審査にかかる手間を省略することができます。

販売店に卸売

4つ目は、現地パートナー企業に商品を卸売する方法です。EC以外にも店舗販売ができるなど、販路を複数持つことができるメリットがあります。ただし、現地企業に都合を合わせなければならず、思うようにビジネスを進められないリスクがあります。

個人オークションサイト 

5つ目は、個人オークションサイトに商品を出品・販売する方法です。タオバオなどのオークションサイトで販売をおこなうのですが、個人間での取引が主になっているため、小さく始めようとする際にオススメな販売方法です。手間も費用もかけずに越境ECを始められる反面、出品するのに現地の住所や銀行口座を確保する必要があるので注意してください。

参入する際に検討すべき項目

実際に中国越境ECに参入する際に、確認しておくべき項目があるので解説します。

価格設定

まずは、価格設定についてです。送料や関税も考慮して、日本の販売価格の3割増しほどの価格が目安となるでしょう。理由としては、中国ECでは大きなイベントやLIVEコマースが頻繁に行われているため、割引に絶えうる価格設定をする必要があるからです。特に11月11日は年間を通して最もセールスしやすい日でもあるので、割引やキャンペーン施策は欠かせません。

顧客対応

中国越境ECでの顧客対応は基本的にチャットでおこなわれています。ユーザーは返信スピードも店舗評価の一つとして見ているため、24時間365日対応の企業も少なくありません。ですが、素早い対応が必要な反面、購入促進ツールとしても利用できます。他のオススメ商品を紹介してセット購入を促すなどです。チャットを上手に使いこなすことが中国越境EC攻略のカギになるかもしれません。

転送サービス

中国の人は世界中で良い商品を探しているため、中には日本語のサイトへ直接アクセスしてくるユーザーもいます。そのような顧客へ商品を届けるため、転送サービスを利用する企業も多くあります。注文を受けてから商品を転送会社に送付すると、転送会社が中国の購入者へ届けてくれる流れです。自社HPを中国語表示にカスタマイズするだけで、熱心なユーザーを獲得することも可能です。

保税庫

商品発送の方法としては、中国国内の保税倉庫に商品を保管するか、日本から直接送付する方法のいずれかがあります。保税倉庫で保管する場合は販売するまで税関を通す必要がないため、販売数の目処がたっている商品の保管に便利です。

中国の越境ECでのマーケティング

中国の越境ECのマーケティング例をご紹介します。中国独自のサービスが多数存在していますから、認知を広げるためにも網羅的に利用するのが良いでしょう。

SNS

最もベーシックなマーケティング方法はSNSの利用です。費用負担がもっとも小さくすぐに始められる手法です。以下に代表的な中国SNSをご紹介します。

lWechat・・・中国で最も利用されているチャットアプリ

lDouyin・・・中国版TikTok

lQQ・・・10代を中心に利用されているチャットアプリ

lWeibo・・・中国版Twitter

l快手・・・Douyinに競合するショート動画投稿サービス

lビリビリ動画・・・中国版ニコニコ動画インフルエンサー

中国ではライブコマースが普及しているため、KOL(Key Opinion Leader)やKOC(Key Opinion Customer)と呼ばれるインフルエンサー・マーケティングが効果的です。中国トップのインフルエンサーは、独立の日に1,000億円以上売り上げる人もいます。

モール広告

モールに出店した際には、認知度向上のためのモール広告は必須のマーケティング手法と言えるでしょう。リスティング広告を始め、モールで利用できる広告は多数あります。商品やターゲットに合わせて使い分けましょう。

中国で商品販売する際の注意点

中国で商品販売をする際の注意点を3つご紹介します。

関係構築

中国越境ECで出店すると担当者がそれぞれ付くのですが、広告費を使ってくれる店舗ほど優遇される傾向にあります。店舗の広告費が担当者自身の業績にもつながるからですね。担当者との関係構築が、店舗運営をスムーズにするカギとなるでしょう。

イベント参加判断

中国越境ECと言えば派手なイベントが有名ですが、参加費が必要なことがほとんどで、参加の返事も当日中におこなわなければならないケースが多々あります。一度断ってしまうと次回のオファーをしてもらえないこともありますので、参加に本社の了承が必要な場合は早めの決断ができるよう社内で根回ししておくことが大切です。

広告法

ECで気をつけなければならないことは、誇大表現を避けることです。中国にも広告法が定められており、各モールでも独自基準が設定されています。例えばですが、Tmallでは「最高級」「最良」といった表現が禁止されています。日本でいう「No.1」に該当するような表現です。日本のサイトでは多く見かけますよね。発覚すればモールから除名されるリスクもありますので、規則に抵触しないような運営を心がけましょう。

まとめ

中国越境ECについてまとめます。

l中国人の購入経路がECへ移行しているl 中国人のネットユーザーのほとんどが利用しており10億人近い人にアクセス可能lECモール出店には厳しい審査があるが、業務委託やオークションサイトの利用など、目的に応じて参入する方法は複数ある今後の成長が確実視されている産業であり、その分競争力も増していくことも予想されます。中国越境ECへの参入方法は複数ありますので、本記事を参考にしていただけると幸いです。