越境ECとは何か、どこのサイトが注目をされているのか、気になっていませんか?越境ECとは、日本から海外へ商品を販売する際に利用されるプラットフォームのことです。商品をインターネット上のショップで取引することをECと呼びますが、日本ではAmazonや楽天が取引量の大きいECプラットフォームです。国境を超えて商品を届けるためのECが、越境ECという訳ですね。本記事では、越境ECの概要や、進出するのにおすすめな海外ECサイトを解説します。世界の越境EC市場は2019年の時点で80兆円ほどですが、経済産業省の資料によると2026年までに500兆円にまで成長することが予想されています。今後6倍以上の成長が期待されている市場ということですね。記事内では、日本の企業が今後どの国へ事業拡大を目指していきたいのかもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

目次

越境ECとは、インターネットを通じて国境を越えて自国の商品を販売するためのサービスです。コロナ禍で海外渡航が難しくなっている現代において、海外でしか手に入らない商品を入手するための方法として注目を集めています。海外からの購入といえば、中国人観光客の「爆買い」が有名ですよね。ですが、今ではほとんど見かけることがなくなりました。コロナで日本に訪問できなくなったことや、法整備で在日バイヤーが中国に商品を輸送しづらくなったことが原因です。越境ECなら日本の商品をメーカーから直接購入できるため、偽物を買わされる心配がなく、安心して商品を手に入れることができるのです。

越境ECの種類

日本企業が越境ECに参入する方法ですが、大きく3つの方法に分かれます。

海外のECモールに出店

1つ目は、海外のECモールに自社の店舗を出店させることです。通常海外のECモールに出店する際は、現地法人を設立する必要がありますが、越境ECを利用すれば国内法人のまま出品することが可能になります。具体的には中国ならTmall Global(天猫国際)やKaola(考拉海購)が、アメリカならAmazonやeBayなどが越境ECが可能となっています。

自社ECサイトで海外向けに商品販売

2つ目は、自社のECサイトで海外向けに販売をおこなうことです。海外在住の熱心な消費者は、日本のECサイトから転送サービスなどを利用して商品の購入をしています。日本語は世界の中でも難解な言語とされていますから、英語や中国語などのページを準備するだけでも購入の機会を増やすことができるでしょう。

現地代行販売会社で卸売

3つ目は、現地のECにすでに出店している企業へ卸売をする方法です。越境ECを利用する際は、該当ECサイトの審査を受けなければなりません。偽物を扱わないなど販売商品の品質管理や売上の見込める店舗を出店させるため、出店に際して保証金が必要なケースもあります。そのため、テスト的な参入を試みる場合は現地ですでに出店している企業とパートナー契約を結び、卸売で開始することも可能です。

世界の越境ECの市場規模ですが、2019年の時点で7,800億ドル(約80兆円)と推定されており、毎年30%の成長が続けば2026年には4兆8,200億円(約500兆円)まで拡大すると予測されています。(引用元:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」)7年間の間に6倍の規模に成長することが経済産業省の資料にも記載されているのです。JETROも海外におけるEC販売プロジェクト「JAPAN MALL」を組織して、積極的に日本企業の海外進出を推進しています。日本企業の越境ECの進出先として最も多いのが中国です。中国のEC市場は200兆円を超えており、2位のアメリカの三倍以上の取引量を誇る世界一の市場となっています。中国の各ECモールも海外ブランドの呼び込みのために越境ECに取り組んでおり、代表的な越境ECにTmall Global(天猫国際)やKaola(考拉海購)があります。なお、2020年に中国から越境EC経由で購入された総額は1兆9499億円で、前年比から17.8%輸出額が増加しており、今後ますますの成長が期待されています。

越境ECを利用するメリットを解説します。

海外顧客の獲得

1つ目のメリットは、海外の顧客を獲得できることです。アメリカNo.1のAmazonの月間ユーザーは4億7,000万人、中国No.1の天猫の月間7億5,000万人です。対して日本No.1である楽天の月間アクティブユーザーは3,600万人です。越境ECで海外に進出すると日本の10倍20倍の市場に参入することができることになります。近年では東南アジアのECも伸びており、ますます世界のEC市場は広がっています。

ビジネス拡大のチャンス

2つ目のメリットは、越境ECの参入がビジネスを広げる機会でもあるということです。日本の商品を購入するルートが中国人の爆買いのような現地での購入から越境ECでの購入に移ったように、越境ECには日本商品を待ち望む潜在的なユーザーが多くいます。日本人には海外から通販で商品を購入するイメージが中々湧かないかもしれませんが、海外のユーザーは積極的に外国商品を購入している事実があります。2020年の日米中の越境EC市場では、日本は中国・アメリカから合計3,416億円分の商品を購入していますが、中国・アメリカへの販売は合計2兆9,226億円と圧倒的に日本商品を購入している額の方が大きいのです。ビジネス拡大の機会が見えてきそうですよね。

続いて、越境ECのデメリットです。

輸送コストがかかる

1つ目のデメリットは、輸送コストが国内よりも高くなることです。海外に商品を輸送するため物理的な費用が上乗せされ、消費者に届くときには日本で手に入れるよりも割高になってしまいます。輸送時間も国内なら翌日に届くものでも海外の場合は1〜2週間かかることもあるでしょう。また、通関にかかる費用や紛失リスクなども発生します。越境ECに参入する前の入念な事前確認が必要になることでしょう。

国によって商習慣が異なる

2つ目のデメリットは、国ごとに商習慣や規制が異なる点です。日本で売れている商品が海外では規制で販売できない、日本では問題ない広告表記が海外では違反になる、日本では使いやすいと評判のサイトデザインなのに海外では使いづらいと評価される、などです。日本で生産する品質の良い商品であっても現地の人に響かなければ届けられないデメリットがあります。

海外進出を狙う他の日本企業はどこの国を狙っているのか、気になりますよね。2022年に公表されたJETROのアンケート調査によると、事業拡大を図る国別ランキングは、1位:アメリカ、2位:ベトナム、3位:中国、4位:タイ、5位:西欧、6位:台湾という結果が出ています。これまでは中国が首位を守ってきていましたが、アメリカが海外進出の予定先で1位となりました。また、近年国内ECの利用が伸びているベトナムが中国を抜いて2位にランクインされています。ベトナムはインターネット利用率が68%で世界の上位20ヵ国に入っており、スマホ利用率も64%で世界の上位10ヵ国にランクインしています。EC市場も2016年から2020年までの間で年平均成長率30%となっており、成長著しい市場です。

(引用元:JETRO「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」)

越境ECを始める際に検討すべきことを見ていきましょう。

販売可能な商品か

検討すべき1点目は、現地で販売可能な商品であるかです。世界的にEC市場が伸びていることを受け、各国でECに関する法整備も進んでいます。規制緩和で業績が伸びているカテゴリもあれば、海外での販売が禁止されている商品もあります。販売を検討する際は、販売先のECモールで出品できる商品かどうかを確認する必要があります。

商品のニーズがあるか

検討すべき2点目は、販売する商品のニーズがあるかです。いくら大きな市場で商品を販売できるといっても、現地の人の認知がない商品であれば販売が滞る可能性もあるでしょう。日本で売れているからといって、同様に海外でも売れるとは限りません。販売前には現地で入念にリサーチすることが大切です。

現地のマーケティング方法

検討すべき3点目は、現地でのマーケティング方法です。商品をすでに知っている人に買ってもらうのは容易いですが、新商品を販売する場合は特に現地で受け入れやすい環境を整えることが大切です。例えば米国で成功したメルカリの場合、進出当初は日本のアプリをそのまま英語版にしたものをリリースしましたが全く利用されなかったそうです。サービスのコンセプトを変更し、サイトイメージを刷新するなどローカライズを徹底することで、ようやく利用されるようになりました。日本の大手であってもローカライズを怠ると痛い目を見てしまう例でもありますね。

越境ECに参入するための準備を整えます。

商品の準備

まずは販売する商品の準備です。現地での輸出規制に抵触しないかなどの最終チェックをおこないます。

法律・規制の確認

続いて、現地で販売する際の規制を確認します。成長著しいEC分野では、各国とも規制の引き締め・緩和が随時実施されています。進出前に最新の情報を確認しましょう。

出店の方法を選択

出店の方法を選びます。本記事では、海外のECモールへ出店・自社の海外向けECサイトでの販売・現地パートナー企業へ卸売の3つをご紹介しました。自社の状況と現地の販売環境を鑑みて適切な方法での販売環境を構築しましょう。

海外の注目越境ECサイトを中国、アメリカ、東南アジアを中心に10サイトご紹介します。

中国:Tmall Global(天猫国際)

中国越境EC市場でNo.1シェアを誇るECモールです。世界No.1のC2C型ECサイト「タオバオ」と世界No.1のB2C型ECサイト「Tmall」を持つアリババグループが運営する越境ECサイトでもあります。出店には厳しい審査を設けており、偽物を排除する姿勢でユーザーの信頼を獲得しています。ユーザーの半数は20歳〜29歳の若者で、月の購入額は5,000円〜10,000円が最も多い層となっています。また、国内インフルエンサーや流行などの影響を強く受けており、購入する商品には品質と正規品にこだわりを持っている層でもあります。Tmallでは11月11日に独身の日セールを2009年から開催しており、2021年はアリババグループ全体で1日に9兆円を売り上げるなど、国内最大規模のイベントとなっています。また、8月8日には「天猫国際グローバルカーニバル」という越境EC向けのセールイベントも開催されます。

中国:Kaola(考拉海購)

中国越境EC市場でNo.2のシェアを誇るECモールです。中国各地に海外から送られてきた通関前の商品を保管できる保税倉庫を保有しており、配送スピードの速さに強みを持っています。自社ブランドの店舗を出店する直営店が全体の4割を占めており、メーカーから直接商品を購入できるメリットでユーザーの定着化に成功しているのが特徴です。20代から30代の購入意欲の高い女性からの支持が高く、ユーザーの8割を女性が占めています。2019年にアリババグループが20億ドル(約2,100億円)で買収し、中国越境ECの半数のシェアをアリババグループが占める形となりました。

中国:JD Worldwide(京東国際)

中国越境EC市場でNo.3のシェアを誇るECモールです。読み方は「ジンドン」。中国のECモール全体では考拉を吸収した天猫と京東がシェア8割を占有する巨大企業になっています。京東の強みは独自の物流ネットワークにあり、午前11時までの注文なら当日配達が可能など、配達スピードに秀でている企業です。2016年には世界に先駆けてドローンによる無人配送をスタートし、40万以上の無事故配送の実績を残しています。また、企業から直接仕入れて販売するB2B2Cモデルで多くのメーカー直販商品を揃えており、正規品の安心感で消費者の信頼を獲得しました。家電販売からスタートした京東は実店舗ビジネスも得意としており、オフラインでの販売も含めると小売業界では京東が業界のトップ企業となっています。京東のセールイベントといえば、毎年6月18日に開催される「京東618商戦」です。京東の設立日(6月18日)を祝う目的で始まったイベントではありますが、現在では天猫の独身の日セールに並ぶ中国EC業界の二大イベントとなっています。

アメリカ:Amazon

AmazonはアメリカのEC市場において38.7%のシェアを誇る小売No.1企業です。2019年の売上は24.9兆円で、2位であるWalmartが3.4兆円なので、7倍以上の差をつけてトップに君臨し、圧倒的な市場シェアを獲得しています。2019年にアメリカ国内での会員数1億人を突破し、アメリカ人の3人に1人がアマゾンを利用している状況です。海外も合わせた会員数は2億人に上り、アメリカの小売業界を牽引する存在となっています。

アメリカ:Walmart

Walmartはアメリカ2位の売上規模を誇る小売ECを展開しています。2019年の売上は3.4兆円で1位のAmazonに大差をつけられていましたが、2022年の見込み売上が8兆2,000億円に到達するなど今なお成長著しい企業でもあります。アメリカ国内にある約5,000ある店舗を利用し、オンラインで注文した商品を店舗で直接受け取れるなど、オフラインとの融合に強みを持っています。2020年には楽天もWalmartのECサイトに出店し、化粧品を中心に日本商品の販売促進をはかっています。

アメリカ:ebay

アメリカ3位の売上規模を誇るEC小売企業はebayです。2019年の売上は3.3兆円となっているため、Walmartとほぼ同立と言えるでしょう。世界180ヵ国以上にサービスを展開し、ユーザーの数は1億4,000万人となっており、世界中で商品の取引が可能です。ebayの特徴としては、ebay自身が仕入れや在庫確保をすることがなく直接販売者と消費者を繋ぐ役割をしているので、相場よりも低価格で購入できる可能性が高いこと。他では入手できない商品を見つけることを楽しみにしているユーザーも多くいるので、大手でなくても参入しやすい環境が整っています。

東南アジア:Shopee

東南アジアのECサービスといえばShopeeとLazadaが二大巨塔となって覇権争いをしています。2019年まではLazadaがNo.1でしたが、アプリダウンロード数の伸びが後押しとなり、2020年にはShopeeが首位に立っています。2015年にシンガポールでスタートしたShopeeは、タイ・マレーシア・ベトナム・インドネシアなど東南アジアを中心に商圏を広げ、月間アクティブユーザーは2億9,000万人となっています。

東南アジア:Lazada

LazadaはドイツのEC企業がシンガポールで設立し、2016年にアリババグループが買収したECサービスです。タイを中心に東南アジア6ヵ国に展開しており月間アクティブユーザーは1億人を超えています。Amazonのように出品時にLazadaの倉庫に郵送・保管し、注文を受けたらLazadaが配送・集金・振込までを手配してくれる段取りになっています。

ベトナム:Tiki

Tikiは、日本企業が海外ECの進出先と見ているベトナムの大手ECサイトです。月間アクティブユーザーは3,500万人で、送料無料での配達や数日での配送が可能な点で人気となっています。クレジットカードの普及が進んでいないため、ほぼ全ての決済が代引き決済となっており、届いた商品が間違っていないことを確認してから商品代金を支払うのが一般的です。

台湾:PChome

PChomeは台湾最大のECモールです。自社倉庫を駆使した物流に強みを持っており、24時間以内に配送できなかった場合は100台湾ドル(約430円)のポイント補償するサービスを実施しています。170万点以上の豊富な商品を揃えており、日本からも300社以上が出店しています。主な売れ筋商品はカップ麺やお菓子などの食品類、化粧品や家電製品となっています。

越境ECについてまとめます。

  • 越境ECとは、日本製品を海外ユーザーに届けるためのプラットフォーム
  • 越境ECの市場規模は80兆円で、東南アジアのECも伸びている
  • 日本企業が進出を図る国はアメリカ、ベトナム、中国が中心

今後6倍の成長が期待されている越境EC市場。中国・アメリカが二大巨塔として君臨していますが、東南アジアのECも成長著しいエリアです。本記事が越境ECを利用した海外進出のお役に立てれば幸いです。

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