越境ECの市場規模はどれくらいなのか、次はどこの国が狙い目なのか、気になっていませんか。世界の越境EC市場は80兆円ほどで、経済産業省が示す資料によると今後数年で5倍以上の成長が見込まれている分野でもあります。本記事では、越境ECの世界各国の市場規模について解説していきます。越境ECの中でも圧倒的な市場があるのは中国です。日本からも越境ECを通じた取引額では中国への輸出が最も多く、2020年の実績値としても前年比17.8%増加しており成長が続いています。記事内では、海外展開を図る日本企業が中国に次ぐ市場としてどこの国に注目しているのかもご紹介しています。今後越境ECでの海外展開を検討されている際は、ぜひご覧ください。

目次

越境ECとは、インターネットを通じて自社の商品を海外の消費者にも届けるために利用される国際的な電子取引のことです。コロナの世界的な流行で各国とも巣ごもり需要が増加しており、多くの国でECの業績が向上しています。コロナ禍でのビジネス拡大のためのツールとして、海外にも商品を販売できる越境ECが今注目されています。越境ECの利用方法としては、海外ECモールへの出店、国内の自社ECサイトでの販売、海外のECサイトへの卸売が主な方法になります。自社の状況・希望の応じて適切な販売方法を選択します。

海外のECモール

1つ目は、海外にあるECショッピングモールに自社の店舗を出店させる方法です。基本的には、現地に法人を設立し現地の貿易法に則ってEC販売を行います。ですが、国際的なEC利用が活発になってきたことを受けて、各国で越境専用のECモールが構築されています。越境ECモールでは、現地に法人を作ることを必要とせず、日本法人のまま日本の法律での自社商品の販売を可能にしました。出店には審査がありますが、日本国内でビジネスを完結させつつ本格的に海外市場へ参入できる方法です。

国内の自社ECサイト

2つ目は、国内の自社サイトを海外訪問者向けに構築する方法です。自社の国内サイトに訪問してくれた方に対して言語対応などをおこなうため、海外モールに参加するような審査がありません。最低限の手続きだけで始められます。海外の熱心な消費者は商品の品質が良ければ転送サービスなどを利用して積極的に海外の現地サイトからでも商品を購入していきます。

海外のECサイト

3つ目は、すでに海外のモールで出店している店舗に卸売する方法です。先述のように、越境ECといえども出店するには審査があります。商品の品質や安全性を保つために、年々審査が厳しくなっている傾向も見受けられます。そのためすでに出店している店舗に卸売をすることで、手続きを省略して海外進出を果たす方法として採用されています。

越境ECの各国の市場規模についてみていきましょう。

世界の越境EC

まずは世界の越境ECの規模について確認します。世界の越境ECは今後6倍以上の成長が見込まれています。理由としては、経済産業省の資料によると2019年時点の世界の越境ECは80兆円とされていますが、2026年には500兆円にまで成長すると予想されているからです。成長の理由としては、越境ECが普及し海外の商品をインターネットで購入することがより一般的になること、自身の国では販売されてないような商品を海外へ積極的に探すようになること、各国での経済成長にともないインターネットでの購買力が向上することなどが挙げられます。コロナ禍で海外への渡航が規制され現地での商品購入が難しくなっている現代において、越境ECは海外の品質の良い商品を購入する手段としてより身近なものになっていくことでしょう。(引用元:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」)

日中米の越境EC

越境ECの中でも大きな市場となっている中国とアメリカ。両国と日本の取引市場についても見ていきましょう。EC全体の市場において、2020年時点で世界2位のアメリカの市場規模は80兆円で3位の英国の4倍、1位の中国においては市場規模が240兆円でアメリカのさらに3倍となっています。越境ECについても中国とアメリカの2国は大きな存在です。2020年は両国へ約3兆円近くの日本商品が越境ECを通して輸出されました。中国への輸出においては1兆9499億円で前年比17.8%の増加、アメリカへの輸出においては9,727億円で前年比7.7%増加しています。日本全体のEC市場は20兆円ほどですから、越境ECの市場は全体の15%ほどとなっており、無視できない規模にまで成長しています。

東南アジアの越境EC

中国・アメリカ以外で市場を伸ばしているのが東南アジアのEC市場です。ASEAN6ヵ国(シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム)を合わせたEC利用者は推定5億人、各国ともネット利用者・EC利用者が増えており、今後の成長が期待されています。中国のアリババグループが月間のアクティブユーザー9億人で90兆円の取引があるのに対して、東南アジア6ヵ国のユーザーは5億人で取引高は3兆円にとどまっています。今後の伸びしろが大いにある市場とも言えるでしょう。越境ECについては2013年の市場規模が3,000億円で2018年が6,000億円となっており、5年で2倍の成長を遂げています。中国・アメリカの越境EC市場規模に比べてまだ数%の規模しかありませんが、コロナ禍で各国ともEC市場全体が伸びているので、越境ECのみで1兆円規模となるのもそう遠くないことでしょう。

JETROの「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によると、日本企業が今後海外で事業拡大を目指す先として挙げているランキング上位の国は、アメリカ・ベトナム・中国の3ヵ国です。圧倒的な世界最大の市場を持つ中国、規制厳格化の影響が少ないアメリカ、ネットユーザー・ECユーザーが多く経済発展に伴い今後の成長が期待されているベトナムが進出先として注目されています。中国の越境ECといえばTmall Global(天猫国際)やJD Worldwide(京東国際)、アメリカならAmazonやWalmart、ベトナムならShopeeやLazadaが進出先の具体的な候補となるでしょう。また、ShopeeやLazadaはASEAN6ヵ国(シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム)全ての国で利用者数1位、2位を独占している状態です。ShopeeかLazadaでの販売ノウハウを蓄積していけば、販売先の横展開を検討する際の助けになってくれるはずです。

越境ECの市場規模についてまとめます。

  • 世界の越境EC市場規模は80兆円で、今後も毎年30%近い成長が見込まれている
  • EC市場と同様に越境ECにおいても中国とアメリカの市場が大きい
  • シンガポール、タイ、ベトナムなど東南アジアでの成長が期待されているが、現時点での規模としてはまだ大きなインパクトはない

東南アジアの越境EC市場が伸びていますが、依然として進出先として人気があるのが中国・アメリカの二国です。熱心な日本製品ファンも多く、今後も着実な成長が見込まれる市場と言えるでしょう。

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